ネクタイって汚れたら洗ってもいいの??
素材や洗い方に気をつける必要があるから一緒に見ていこうか。
店舗で販売をしていると、「ネクタイは汚れたら洗っても大丈夫ですか?」と聞かれることが多くあります。
ビジネスマンなら毎日身に付けるネクタイですが、ネクタイのお手入れ方法を知らない方が意外と多いのです。
私はネクタイを販売していますが、数年前は中古のネクタイも取り扱っていました。中古のネクタイにはシミや汚れも付いています。出来るだけ綺麗な状態で販売したいので、場合によっては専用洗剤でシミ抜きや、手洗いを行います。
しかし一度洗ってしまうと、ネクタイはもとの状態に戻すことは出来ません。シワが付く事はもちろん、ネクタイ自体がよれてしまうのです。
よく考えれば洗濯のプロでは無いので、この結果は当たり前ですよね。
今回は、ネクタイの素材と特徴などをご紹介しながら、素材に合ったお手入れ方法もご紹介致します。
洗える!?ネクタイもご紹介!!
ネクタイの素材
ネクタイの素材として代表的なのは、ウール(羊毛)、シルク(絹)、リネン(麻)、コットン(綿)、カシミヤ、ポリエステルです。
ネクタイは直接肌に触れる訳ではありませんが、季節や合わせるスーツに合った素材を選びたいですね。
スーツの中心にくるネクタイは、多くの人の目に止まります。その為、素材が良いものは見る人によってすぐに品質の良いネクタイと分かります。自分が思っている以上に、周りから見られていることへの意識がとても大切です。
天然素材 ウール(羊毛)
【天然素材 ウール】
ウールは羊毛で作られている。秋冬に適した素材で、あたたかな優しい印象の素材。コーディネートに季節感を出すこともでき、光沢感のないフランネルやツイードのスーツとの相性が良い。
ウール素材のネクタイは、ふんわりとしてあたたかなぬくもりのある印象が出ますが生地に厚みが出るので、とても締めにくく感じます。薄手のネクタイを選ぶと綺麗に身に付ける事ができるでしょう。
洗濯NG!!
天然素材 シルク(絹)
【天然素材 シルク】
シルクは、ネクタイに使用される最も代表的な素材であり、蚕(かいこ)の繭から作られるタンパク質の天然繊維。フォーマルのドレスなどでも使われるシルクは、美しい光沢と滑らかな肌触りが特徴。また、色合いも上品且つ鮮やかで華やかな印象になる。
季節やシーンを問わず身に付けられる、シルク素材のネクタイはとても万能でプレゼントにも最適な素材と言えるでしょう。
一方シルク素材は、摩擦に弱く傷つきやすい非常に繊細な素材でもあるため、洗濯はNGです。
無地のシルクネクタイですと、毛羽立ちやひっかかりが目立ってしまう場合がありますので、取り扱いには注意が必要です。
洗濯NG!!
天然素材 リネン(麻)
【天然素材 リネン(麻)】
リネンは春から夏にかけての素材で麻の一種。 麻とは植物に含まれている繊維の総称。
とても軽くて涼しげに見えるので、ムシムシとした不快な湿気や暑さがある6月から8月は特に爽やかな印象になる。
クールビズで、ネクタイを着用しない方も、たまにはリネンのネクタイで季節感を出しても素敵ですよ。
また、リネンはシワが付きやすい素材ですが、ネクタイのアイロン掛け、洗濯は、ネクタイのふんわりとした質感が失われてしまうためNGです。着用後は思わぬ箇所に大きなシワが付かない様に、綺麗に保管しておくことが重要です。
多少のシワはリネン素材の魅力でもありますので、あまり神経質にならなくても大丈夫!!
洗濯NG!!
天然素材 コットン(綿)
【天然素材 コットン(綿)】
コットンとは、アオイ科ワタ属の植物から取れる「ワタ」からできる木綿(もめん)を指す。ビジネスシャツなどでおなじみのコットン素材は、私たちには最も親しみがある素材。
生まれたばかりの赤ちゃんのお肌にも優しく、肌触りが良いのが特徴。
ネクタイでは、シルクや化学繊維の素材と合わさって使用されることが多い素材です。
シルクやリネンに比べて落ち着いた色合いで、幅広いシーンで活躍します。基本的に洗濯はNGです。
洗濯NG!!
天然素材 カシミヤ
【天然素材 カシミヤ】
カシミヤとは、カシミヤ山羊の羊毛を用いた繊維素材。高級素材としてとても有名。カシミヤは、手触りがとても滑らかで艶があることが特徴。
柔らかで気品を感じさせる雰囲気はカシミヤの最大の特徴といえるでしょう。
ウールと比べてもその違いは触れてみれば誰もが分かるはずです。
秋冬のスーツスタイルからカジュアルまで、幅広いスタイルとの相性が良く、身に付けるだけで簡単に季節感を取り入れたコーディネートとなるのも嬉しいポイントです。
カシミヤのネクタイも、ウールやシルクのネクタイと比べて生地が厚くなりますので、結び目が太く締めづらく感じる方が多いです。
こちらも洗濯はNGです。
洗濯NG!!
化学繊維 ポリエステル
【化学繊維 ポリエステル】
石油を原料とした物質から作られる繊維。様々な化学繊維がありますが、ポリエステルは化学繊維の中で生産量が一番多い素材。私たちが普段着用している下着や機能性インナー、スポーツ用ウェアなどアパレル製品だけではなく様々なアイテムに使用されている。
ポリエステルは軽量な上に耐久性があり摩擦にも強い繊維です。シワになりにくいのに、形状記憶性が高いといった特徴もあります。カビや湿気にも強く、衣類やバックなどの裏地にも良く使用されていますね。
メリットがいっぱいのポリエステルですがデメリットもあります。それは、通気性がないことです。汗をかいたときにベタベタと洋服が肌に張り付き不快に思うことがあります。皆さんも1度は経験があるのではないでしょうか。
そして、敏感肌の方やアトピーの方は、この様な化学繊維の服を着用すると、チクチク感じたり痒くなったりして肌が反応してしまうこともあります。
ネクタイの素材に使用されるポリエステルは、綿やウールなどと一緒に織られていることが多く、他の天然素材に比べて安価な上に使い勝手の良いネクタイでしょう。
シルクのような光沢があるので、フォーマル用のネクタイとしてもよく使用されています。家庭で洗濯できるネクタイとして販売されているもの以外は、洗濯はしない方が良いでしょう。
洗濯NG!!
ネクタイのお手入れ方法
お気に入りのネクタイを長く愛用するために、日々のお手入れ方法をご紹介します。
これを読めば自己流のお手入れをしてしまい、ネクタイをダメにしてしまう…なんて心配もありませんよ。
まずは、素材によってお手入れ方法が異なる為、ネクタイのタグを見て素材の確認をしましょう。
上で説明したように、ネクタイの素材は大きく分けて天然素材と化学繊維の2つに分けられます。洗濯表示をチェックしてドライクリーニングのみの表記のものは、自宅での手洗い、洗濯はできませんので注意してください。
優しく手洗いすれば良いかな~と思う方もいると思いますが、ネクタイを自宅で洗うことは、基本的に今手元にある状態よりも型崩れが起き、生地の傷みが出ると思って下さい。そのくらいに、自宅での洗濯は綺麗に仕上げることが難しいのです。
ネクタイを長持ちさせるポイントーネクタイのためのルーティンー
1日使用したネクタイは、ハンガーに掛けておきましょう。
下の写真ようなネクタイ専用のハンガーも販売されていますが、ネクタイにシワが付くこと無く綺麗な状態で掛けられるのであれば、通常のハンガーでも問題ありません。
ネクタイに付いた埃やゴミを落とすためにブラッシングをしましょう。
天然素材の馬毛や豚毛のブラシを使用すれば、ネクタイの生地を傷めることなく綺麗に埃を落とすことができますよ。また、ブラッシングは軽く行って下さいね。
劣化や型崩れなどを防ぐためにも、スーツと同様にネクタイも数日ごとに休ませながら使用しましょう。連日の使用を控えるだけでも、ネクタイを綺麗な状態で保つ事ができます。
※ニットタイなどは、ハンガーに掛けて保管してしまうと生地が伸びてしまいますので、クルクルと丸めたり平起きにしたりして保管しましょう。
ネクタイにアイロンを掛けても大丈夫??
ネクタイにシワが出来てしまった時、アイロンを掛けたらいいのでは?と思っている方は少なくないはずです。しかし、ネクタイにアイロンは最もNGな行為です。
ネクタイに直接アイロンを掛けてしまうと生地にテカリが出てしまい、元に戻せなくなってしまいます。そして、アイロンを掛けたことでネクタイのふんわりとした風合いも無くなってしまいます。
シワが出来てしまった時は、まずはネクタイを2~3日ハンガーに吊しておきましょう。
ハンガーに吊るしておくと、ネクタイの重みで大体のシワは取れるはずです。まだ残ってしまっている頑固なシワは、アイロンのスチームが最適です。
スチームの当て方
- ネクタイに必ず当て布をします。(当て布は綿素材のハンカチなどでOK)
- 当て布からアイロンを浮かしながらスチームを当てます。
- 手で軽くネクタイの形を整え、ハンガーに数日間吊しておきましょう。
ネクタイにシミが付いてしまったら!?
体の中心にあるネクタイは、食事中にシミや汚れが付いてしまうことも多いと思います。そうならないように注意をすれば良いのですが、もしもシミや汚れが付いてしまったら…
まずは慌てずに、布でポンポンと軽くたたいて汚れを取りましょう。
ごしごし擦ったりせずに、汚れの上から軽くポンポンです。必要以上に強い力で叩いたり、擦ったりするとデリケートなネクタイの生地を傷めてしまいます。
そして、すぐにクリーニングへ持って行きましょう。
シミや汚れの種類によって、クリーニング方法が違いますので“シミや汚れの原因”をしっかりとお店の方に伝えましょう。
インターネットで「ネクタイ 洗濯」と検索すると、自宅でのネクタイの洗濯方法が載った記事がとても多く出てきます。洗濯していいのかなと悩んでいる方がとても多いのですね。
インターネットはとても便利ですが、全てを鵜呑みにしてしまうと大切なネクタイがダメになってしまう恐れがあります。
メンズのネクタイを製造・販売していた経験から、私は自宅でのネクタイの手洗い、洗濯はオススメしていません。それは、見た目では分からなかったとしても、必ずネクタイの型崩れが起き、風合いが落ち、生地の傷みが出るからです。洗濯できるネクタイとして販売されているもの以外は、洗濯はしない方が良いでしょう。
洗えるネクタイ!?
ポリエステル100%の素材で手洗いできるネクタイはよく聞きますが、洗濯機で洗えるネクタイがあることはご存じでしょうか?
洗濯機で洗うことは少し前の業界ではありえないことでした。私もこのような商品があると知ったときは驚きでした。
こちらは、オリヒカの洗えるネクタイです。
低価格なので、一度試してみたいなと思いますよね。写真で見ると、とてもポリエステル100%のネクタイとは思えない風合いです。
こちらは、紳士服のアオキから販売している「洗えるネクタイ」です。
3本セットでこの価格にも驚きですが、このネクタイは自宅の洗濯機で洗うこともできます。付属のネクタイ用ネットに4つ折りにしたネクタイを入れ、あとは洗濯機に入れるだけです。レビューを見ると、『柄も生地も良かった。』『何度も洗濯しても付け心地が良い。』『コスパが良い』と、良い評価が多数を占めていた一方で、『安っぽく見えた』『生地が薄くてぺらぺら』といった意見もありました。
『洗える』という機能を取れば、素材はポリエステルを使用することになります。ポリエステルはシルクのネクタイに比べると素材的な高級感は無くなります。また、撥水加工を施すことでネクタイのふんわりとした風合いも無くなってしまうのです。
ネクタイに使用される芯地も通常の物とは違う、水に強い耐水性のある芯地を使用するため『洗えるネクタイ』は通常のネクタイに比べ、素材やネクタイの厚みや風合いがチープに感じてしまうことは、当たり前でありしょうが無いことだと思います。
様々な開発が進んでいますので、近いうちに風合いも変わらないシルクやウール素材の洗えるネクタイが登場する日も近いかもしれませんね。
結論!ネクタイの手洗い・洗濯機はNO!!
ここまでの記事を読んでお分かりいただいたかと思いますが、自身でのネクタイの手洗いや洗濯機の使用は絶対にしてはいけません。
ネクタイは、専門の職人でも扱いが難しいと言われるアイテムです。そんなネクタイを素人の私たちが綺麗に洗い仕上げることはできません。
それぞれの仕事や場所に合ったネクタイを上手に選ぶことが大切です。機能を重視するのか、ネクタイの風合いを大切にしたいのか、を考えることでどのようなネクタイを選ぶか決まってきますね。
どんなものにも、メリットがあればデメリットもあります。それと上手に向き合い自分のスタイルを見つけていくことで自分らしい素敵なスタイルになるでしょう。